スト6のMR(マスターレート)って、勝てば上がって負ければ下がる、それだけといえばそれだけなんですが、よく見ると不思議な挙動をします。
格上に勝つとドカッと増える。格下に負けるとごっそり持っていかれる。配信を見ていると、レジェンド帯のプロが格下に負けて14前後溶ける場面を、みんな一度は見たことがあると思います。
この「相手によって増減が変わる」仕組みには名前がついていて、イロレーティングといいます。そしてこれ、格ゲーだけの話じゃなくて、サッカーの国代表ランキングや、最近だとAIの強さ比較にも使われている、かなり汎用的な考え方なんです。
今回はこのイロレーティングを、なるべく数式を使わずに説明してみます。これがわかると、スト6のMRの見え方も変わります。
イロレーティングは「相対的な強さ」を測る仕組み
まず一番大事なところ。イロレーティングが出す数字は、絶対的な強さの点数ではありません。あくまで「その集団の中での相対的な位置」を示すものです。
チェスのために考案された仕組みで、考え方はシンプルです。2人のレートの差から「どちらがどれくらいの確率で勝つか」を予想して、その予想と実際の結果のズレで点数を動かす。これだけです。
ポイントは「予想からのズレ」で増減が決まること
イロの一番の特徴が、増減幅が固定じゃないことです。
同じくらいのレート同士なら、勝敗は五分と予想されます。だから勝っても負けても動く点数は小さい。予想どおりの結果だからです。
ところがレート差が大きいとどうなるか。レートの差は、そのまま期待勝率に変換されます。ざっくりした対応がこうです。
| レート差 | 上位者の勝率(目安) |
|---|---|
| 0 | 50% |
| 100 | 64% |
| 200 | 76% |
| 300 | 85% |
| 400 | 91% |
| 500 | 95% |
これはイロレーティングの理論上の数字です。スト6のMRが実際にどんな式で増減しているかは公式から公表されていないので、この表どおりに単純計算されるわけではない、という前提で見てください。
レート差500なら、上位者が95%勝つと予想されている。つまりシステムは「勝って当たり前」と思っている。この状態で上位者が勝っても、予想どおりなので点数はほとんど増えません。でも負けたら、95%の予想を裏切ったわけだから、ペナルティが大きくなる。
さっきの「レジェンド帯のプロが格下に負けて大きく溶ける」現象は、まさにこれです。システムが「勝つはず」と予想していたのを裏切ったから、大きく動く。逆にそのとき勝った格下側は、起こるはずのないことを起こしたので、ドカッと増えています。
別記事で詳しく触れますが、スト6でいえば、しっかりランクマを回してMR1500くらいに落ち着く人が、毎ACT2000に届くようなプレイヤーから1勝もぎ取れる確率は、理論上5%くらい。レート差500なので、さっきの表そのままですね。2先で勝ち切ろうと思うとなっかなかですね。
実際はキャラ相性や読み合いのハマり方で、短期的にはもう少しブレそうな感覚はありますけども。
増減は相手次第。これがイロの核心です。
同じ仕組みが、こんなところで動いています
イロレーティングはチェス発祥ですが、今やあちこちで使われています。
サッカーでは、FIFAの国代表ランキングが2018年8月からイロベースの計算に切り替わりました。前回のポイントに加減していく方式で、加減される点数は両者の相対的な強さによって決まる。強い国に勝てば大きく上がり、格下に負ければ大きく下がる。スト6のMRと同じ発想です。
ほかにも、テニスの実力予測モデル、アメフトやバスケの勝敗予測、囲碁の段位換算、そして多くのオンラインゲームのマッチング。対戦がある場所には、だいたいイロかその親戚がいます。
そして個人的に一番面白いのが、AIの強さ比較です。
AIの強さも、イロで測られている
ChatGPTのようなAI(大規模言語モデル)って、どれが優秀かをどう決めていると思いますか。実は、AI同士を戦わせてイロレーティングをつける、という方法があります。
Chatbot Arenaという仕組みで、ユーザーに2つのAIの回答を名前を伏せて見せて、良かったほうに投票してもらう。その勝敗を積み重ねてイロを計算する。まさに格ゲーのランクマと同じ構造です。優秀なAIに勝てば大きく上がる、というあれです。
ちなみにこのプラットフォーム、名前がころころ変わっていて、LMSYS Chatbot Arena、LMArenaと来て、2026年1月からはArenaになっています。この記事は2026年8月時点の話です。
面白いのが数字の一致で、ここでもレート差100はおよそ勝率64%とされています。さっきのスト6の表と同じ数字です。同じイロなので当然なんですが、格ゲーのMRとAIの評価が、文字どおり地続きの仕組みで動いているのがわかります。
(厳密には、対象のモデル数が増えてから、イロを発展させたBradley-Terryという方式に移行しています。ただ「相手との差で強さを推定する」という根っこは同じなので、イロの仲間と考えて差し支えないです)
で、これがわかると何が嬉しいか
イロが「相対的な位置」を測るものだ、と理解すると、レートの数字の受け取り方が変わります。
同じ数字でも、それが「どんな相手と戦った結果の数字なのか」で意味が変わる。強い集団の中でついた数字と、そうでない集団の中でついた数字は、単純に比べられない。この視点は、スト6のMRを考えるときにけっこう効いてきます。
たとえば「日本のMRは海外より価値が高い」みたいな話、聞いたことありませんか。あれが本当なのかどうかも、このイロの考え方から検証できます。

それと、MRが短期でどれくらいブレるのか、実力が変わっていなくても200くらい平気で上下する話も別記事で書きました。
【内部リンク差し込み:MRの揺らぎ記事】
